「…さっきから何を書いているんだ?アルノー」
事は先程から何かを真剣に書いている事から始まる
珍しく、青年―アルノーの方から「休憩にしよう」と言って来たのだが、何か熱心に書いていて上の空なのだった
「…アルノー!」
「………」
先程から何度呼び掛けても、この調子だ
あまりにも沈黙しすぎて、どこか頭を打ったのではないかと思う
「…そろそろ休憩も終わりたいのだがな…」
このままでは、しばらく動きそうにない
諦めて待つことにして
「…よしっ!終わり!!」
「…やっと終わったのか、アルノー」
かなり時間がかかったものだな、と思いながらそれを見る
「…手紙…?」
お世辞にも上手いとは言いづらい字で書かれたソレ
ラクウェルが不思議そうに尋ねると、アルノーは誇らしげに笑う
「ジュードに、送ってやろうと思ってさ。心配、してるだろうし、あっちからは俺達には届かないから」
「…そうか。…アルノー、まだ紙は残っているか?私も、書きたい」
ラクウェルが、隣に座り込む
アルノーは、自分が書いた手紙を荷物に入れ、紙を取りだし、渡した
「ん。ラクウェルはどうせなら絵を描いて送ればいいよ。喜ぶぞ、ジュードとユウリィ。あんなに上手いんだから」
そこまで言って、アルノーはハッとした
まだ、描いた絵を見せたこともないのに、とラクウェルがアルノーを睨む
「…いつ、見たんだ」
とても、恐い
いつも脇に構えている、剣を掴み、恐ろしいほどに威嚇してくるのだ
アルノーは、冷や汗が背を伝うが、もはや気にする余裕もない
「…ちょっ、ラクウェル、話聞け…っ」
「いつ、だ」
「この前、ラクウェルが木陰で寝てた時だよ。だが、不可抗力だかんな!風で開いたのを見ちまったんだから!」
<アルノーは声を張り上げ、弁解する
信じてくれたのか、構えた剣を元に戻すラクウェル
「絵は、まだ送らない」
「…何で」
穏やかな口調で、ラクウェルが言う
アルノーは不思議そうに、問い返した
「どうせなら、再会したときに渡したいのだ」
そう言い切ったラクウェルの顔は、とても――愛しげで
アルノーは、その願いに似た想いは、とても儚いものだと思った
「…さ、手紙を書いてしまおう」
その手紙が届くのは、まだ先の話…――
END