ミトス―それが大樹の新たな名前となった




「なんで、その名前をつけたのさ。ロイドなら、もっと他の名前、つけると思った」

驚きを隠せない様子で、彼―ジーニアスは自分より背の高い、赤い服を着た男子―ロイドに問う
というのも、ロイドが大樹になぜその名前をつけたのか、が気になって仕方がなかった
ミトス、という名前は古代カーラーン大戦を停戦させた人物であり、また自分達を苦しめていた人物だったから

「…ミトスは、この世界に居て良いんだって、あいつに示してやりたくてさ」
「! ロイド…」

答えを聞いて、ジーニアスはまた驚かされた
覚えている、彼―ミトスのことは
裏切られたとき、人一倍辛かったことも
初めて出来たハーフエルフの友達で、隣で笑い合っていたことも

「ミトスは、勇者ミトスは…ここに居るからさ」

ロイドは、ゆっくりと大樹に触れる
そこに宿る、彼を思い出しているようだ

「…そっか…ミトスは、この樹に宿ってるんだ」

ジーニアスは大樹を見上げて、そのせせらぎに耳を傾けた
彼が何かを言っているような気がしたのだ
言葉を発したわけではなかったけれど、確かに感じていた
彼の存在そのものを

「ロイドは、ミトスを大切に思ってたんだね」
「ミトスは…俺達の大切な仲間、なんだ。当たり前だろ」
「…うん」

ジーニアスは頷いて、また見上げた
そこに映っているのは、紛れもなく彼の姿だろう

「ミトスは帰って来たんだよ。マーテルの傍に、さ」





大樹に宿るは、彼等の意志







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