「…なんで、あんな無茶をしたの?」


怒ったような口調で、ティアはルークに言った
その言葉に、返すでもなく、ルークは口を閉ざしたままで

「…ねえ、ルーク」






事は、溯る事数十分前のことだ


戦闘中、ルークはティアに襲い掛かる敵に自分から盾になることで大怪我をしてしまう時まで戻る
瀕死の状態で、意識を手放してしまったのだ
ナタリアとティアの回復術で治ったものの、その戦闘は出してもらえる訳もなく
しかも、体が勝手に動いたと言うより、ルークの場合はティアを護る事が選考したのだろう
ティアは、その事に腹を立てていた
護って貰えるのは嬉しいが、自分が大怪我をしては元も子もないのだ
少しは自重して欲しい、とティアは思う

「…ルーク」

拗ねた子供のように背を向けるルークに、ティアは優しく声をかける
それでも、ルークはティアを見ようとはしなかった

―余程、非難されるのが厭らしい

ルークの性格からすれば、それもありえなくはない
けれど、事が事である
なぜか子供に言い聞かせる母のような気持ちを覚えながら、ティアはルークの正面へと回る




「………」




予想通り、ルークは口をへの字にし、ティアから目を逸らす

「…ルーク、お願い。話を聞いて」

ルークの正面に膝をついて、少々上目遣いの体制で
チラと、一度だけルークは目をティアへ向けた
それを合図とし、ティアはルークの手に自分の手を合わせる

「…護ってくれるのは嬉しいけど、無茶はしないで」
「…でも」




「…護って貰っても、あなたが怪我をしたら意味がないじゃない。さっき、心配で胸が張り裂けるかと思ったわ」




ルークの手を、ティアが握り締める
それに呼応するように、ルークも握り返して

「…ごめん。俺、ティアを護る事で頭がいっぱいで―」

焦り、とでも言えば良いのか
今更な気がするが、ルークは自分がした事への反省を口にした

「…でもね、ルーク」

しかし、それを遮るかのようにティアが言葉を紡いだ
訳も分からず、ルークは押し黙って







「…本当は嬉しかった。ありがとう」







謝ってしまえば、それで終わりかと思っていたルークにとって、完全な不意打ちで
一度目を丸くした後、顔を真っ赤に染めた
ティアに悪気はない
ごく普通に、笑顔で言ったくらいだったのだが、ルークの反応に自分まで顔を赤く染めていた






END








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