「お待たせ、ティア」

部屋に入ると同時に、扉を閉めながら言う
部屋の中に居たティアは、入ってきたルークを見上げ、微笑んだ

「早かったのね」
「そうか?」

と言うティアに、少し首を傾げて尋ねた
ティアは、ルークの問いに頷いて

「えぇ。私が考えていたよりは、だいぶ早かったわ」

そう言いながら立ち上がり、ルークの方へと歩み寄る

「どれだけ見積もってたんだよ」
「二時間」
「それはさすがに多すぎるだろ」

ルークは苦笑しながら、歩み寄ってきたティアを見下ろした
自分が成長したのか、はたまた時間がたちすぎていたのか、ティアがいつも以上に小さく思う
ティアは、苦笑したルークを見上げながら、笑みをいっそう深めた

「そう? 親子水入らずなら、普通だと思うけど」

首を傾げる仕草が、妙にかわいい
自分がいない間に、ティアに何があったのか。そんなことを考える
しかし、もうそれを長く聞いていられるほどの時間もないが

「…ルーク?」

ティアを見つめたまま、動かなくなったルークを、ティアが不思議そうに見上げていた顔を近づけた
そのティアの仕草に、ルークはハッと我にかえって

「ごめん、ぼーっとしてた」
「何か考えごと?」
「あ、あぁ」

ルークが応えると、ティアは尋ねた
それにルークは頷く

「…不安、よね。これから、大変だもの。あなたが生きて帰ってきたことをみんなに知らせなきゃならないし、レプリカたちの問題もまだ完全に解決したわけじゃない。あなたには、これからやることが、やらなきゃならないことが、たくさんあるわ」

ルークが考えていたこととは違うが、それも確かに考えなければならない問題だった
どうにかしないと、被害を被(こうむ)るのは消えてしまう自分ではなく残された者達だ

「…そう、だな」

ルークが頷く
ティアはなぜか、またルークが消えてしまいそうな錯覚を覚えて
無意識のうちにルークの袖を掴んだ

「…ティア?」

そんな、ティアの仕草にルークは内心気付かれたのではないかとヒヤヒヤしつつ首を傾げた
ティアはルークの問いかけにハッと我にかえり、手を放して

「どうかしたか?」
「……なんでもないわ」

ルークは心配そうな表情でティアを見つめる
ティアは、その視線から目をそらし、呟いた
しかし、その表情は言葉とは裏腹に暗い

「ティア、その顔でなんでもないって言われても説得力ないぞ」

その表情を見たルークは、ティアに少し咎めるような口調で言った
ティアはそのもっともな意見に、まだ少し躊躇いを見せながら口を開いた

「………たの」
「ん?」

ティアの声が消え入りそうなほどにか細く、聞き取れなくて
首を傾げるとティアはまた躊躇いを見せながら、呟く

「あなたが、消えてしまいそうに見えたの」
「………!」

ティアが呟いた言葉に、ルークは息が詰まりそうになった
気付かれていない、とは思う
しかし、このタイミングでそんなことをティアが感じている、ということは、気付かれるかも知れない

「そんなこと有るはずないわね。ごめんなさい、今の忘れて」
「……っ」
「きゃっ…ルーク…?」

しかし、ティアはそんな不安を振り払うように首を振り、ルークに背を向ける
ルークは、いたたまれなくなり、ティアを抱き寄せた

「(今しか…チャンスはない、けど…っ)」

自分の臆病さが、ティアを不安にさせているというのに、言えば哀しませることを考えると、何も言えなくなる
ガイは、「言われないで消えられるよりは」とは言っていたが、果たしてそれでいいのか
たとえ、この場でティアに言ったとしても、心の準備が出来るだけの時間はないのだ
ならいっそのこと、言わない方が良いのかも知れないと思う

「…俺は消えない。ティアの居る場所が、俺の居場所なんだから」

今は、こう言うのが精一杯だった
自分で決めたことだが、自分でも気持ちの整理がついていない
こんな状態では、うまくティアに説明すら出来そうにない

「…ルーク…」

ティアは、ルークが浮かべた苦笑に、ルークを愛しげに、それでいて哀しげに見上げた























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