「話、終わったのか」
「…ガイ…」

両親の部屋から出て、自分の部屋に戻るために中庭へ出たところで話しかけられた
そちらを見ると、微笑みながらこちらを見つめるガイの姿

「…あぁ」

ルークが頷くと、ガイは近寄ってきて、ルークの肩に手を置く
何をするのかとルークはガイを見上げて、その見上げたガイの表情に、背筋が凍るような寒気が走る

「…最初に言っておく。お前が今、何を考えているかは知らないが…ティアを哀しませるなよ?」
「…!」

その一言で、ルークはガイの言いたいことを理解する
それは、この後に訪れるであろう結末に対して、だった



―気付かれている



ルークはそう確信した

「…ガイ、俺は…―」

ルークは決心したように重い口を開いた









「…お前、本気か」
「…あぁ」

全てを話した後、ガイが神妙な面持ちて尋ねてきた
その問いにルークが頷くと、ガイはため息をついて
まさか、ルークが考えていたことが、こんなにも哀しい結末になるものとは思ってもいなかったのだ
せいぜい、アッシュと同化した自分はティアと添い遂げることが出来ないとか考えているのだろう、というくらいにしか考えていなかった
しかし、今ルークの言った結末は、とてもではないがある意味一番最悪な結末
アッシュが戻って来ることは悦ばしいが、ルークの存在と引き換えになる、というのはいかがなものか

「母上、父上には話したから、あとは…」
「…ティア、か」

ルークが、重々しく言う
躊躇うようなその口調
ガイはルークが言おうとしていることに察しがついたのか呟く
ルークはゆっくりと、だが確実に頷いた

「でも、言った方が良いのか迷ってるんだ。どっちにしても、ティアを哀しませることに変わりはないから」

そう、言いながらルークはティアの居る自分の部屋を見る
その表情は、哀しみと苦しみとが入り混じり、複雑で
それを見ていると、どうにかして二人―ルークとアッシュ―のどちらも戻って来れないものか、と思う
しかし、当人たちはどうすることも出来ないとわかっているからこそ、この道を選んだのだろう
それを、今更どうすることが出来るだろうか
何も出来ない
そんなもどかしさがガイを襲う

「…俺は、言った方が良いと思うぞ。言わずに消えられるよりは…知っていた方が心の準備も出来るだろう」

そんな、もどかしい、と思う気持ちを振り払い、口を開く
その、ガイの言葉に、ルークは苦笑して

「準備が出来る程の時間もないんだ。俺は、明日になったらアッシュと入れ代わると同時に、ローレライの下(もと)へ行ってしまうから」

ルークが迷っている理由には、これもあるらしい
明日には消えてしまう、ということは、是が非もなく受け入れろ、ということ
それはどれほど残酷な宣告だろう
受け入れられるだけの十分な時間もなく、その人の死を宣告されるのと同じものが

「明日? それじゃあお前…」
「最初から、別れを言うために戻ってきたんだ」
「………」

ガイは、ルークの考える全てを悟ったように呟く
ルークはガイが言いかけた言葉を引き継ぎ、言う
ガイは唖然と、ルークを見つめることしか出来なかった

「あとは、ティアに…」
「…全てを話す、か?」
「でも、言えないかも知れない。ティアを泣かせてしまったら、決心が揺らぐだろうから」

ガイが問いかけると、ルークは頷くが苦笑しながら続けた
そんな、ルークの悲痛な表情を見ていると、どうしてルークやティア、アッシュにばかり酷な選択肢しか用意されていないのだろうと思う
それと同時に、助けられない自分の無力さに、嫌気が差す
そんな道しか選ばせてやれない、自分の不甲斐なさに嫌悪する

「とにかく、早くティアに話してこいよ」
「…あぁ…」

そう、考える思考を頭の端へと追いやり、ガイは言う
ルークは、少し間を置いて頷き、ゆっくりと自室へと歩み出す
その背を、ガイは哀しげに見つめ、送るだけだった




「…あ、ガイ。ひとつ聞いても良いか?」

自室に入ろうと、扉に手をかけかけて、ルークがふと、何かを思い立ったように振り返る
ガイはいきなりのことに一瞬驚いたような表情をしたあと、笑う

「なんだ?」
「…ガイは、俺が消えてもずっと友達でいてくれるか?」

問い返すと、ルークは少し躊躇いながら口を開いた
その言葉に、またも驚かされて、ガイは黙り込む

「…そうだな…。今度お前が新しく生まれ変わって、また俺との賭けに勝ったらな」
「なんだよそれ」

ルークはガイの言葉に苦笑する
しかし、その表情には哀しむような様子はない。ただ、少しだけ嬉しそうな表情
ガイは言葉を続ける

「なぁに。お前が消えても、俺はお前を覚えておくよ。不器用な答えしか出せなかった、親友として、な…」

ガイは言い終わると同時に目を伏せた
矛盾した言葉に込められた意思は、伝わるだろうか
伏せた瞼を開き、ガイはルークを見る
ルークは先程よりも少しだけ笑みを深め、ガイを見ていた

「……ありがとう、ガイ…。俺、ガイが友達で良かったよ」
「―…俺も、お前で良かったと思うよ」

苦しさを含んだ、哀しげな笑みをガイに向け、ルークは自室へと入っていった
ガイはその、哀愁感漂う背中を、ただただ見送るしかなかった






















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