「じゃあ、ティアは先に俺の部屋に行っててくれるか。父上と母上に顔見せて安心させてくるから」

ファブレ家の屋敷に入ると、ルークが言った。それに、ティアは頷く
少し名残惜しそうに、ティアはルークの腕を放した

「…お。やっとお出ましか」

そこに、見計らったかのようなタイミングでガイが姿を現す
その表情はニヤニヤとしているため、何を考えているかは察しがつくが、あえてガイは口を開かない
その様子に、ルークは苦笑いして、ティアはティアで赤くなりながら苦笑いした

「ルークは公爵に会いに行くんだろ? 早く安心させてやれ。奥様はお前が生きてるのを聞いて、泣いて喜んでたぞ」
「! だったら尚更早く行くべきだったじゃねぇかよ! 街ん中見ずに!」

ガイの言葉に、ルークが驚く
慌てて、ルークは両親の居るであろう部屋の方向へと走り出す
しかし、ガイはその反応を予測していたのだろう
笑顔のまま、ルークの腕を掴み、制止した

「なんだよ、ガイ」
「泣いてたってのは嘘だけどな」

ルークがいぶかしげに引き止めたガイを見る
ガイはルークに、してやったり、と言いたげな表情をし、爽やかに言った
その言葉に、ルークは脱力。その場にしゃがみこんで頭を抱えた

「…ガイ…ただでさえ久しぶりに帰ってきたばっかで緊張してんのに、笑えない冗談言うな!」

混乱したのか、少し間を置いてルークが怒鳴った
ガイはそれでも笑ったまま、ルークをなだめるように肩を叩いた

「悪かったって。でも喜んでたのは本当だ。早く行って顔見せてやれ、奥様が待ってる」
「言われなくても」

ガイがそう言いながら立ち上がると、ルークも同じように立ち上がり、両親の居るであろう部屋の方へと歩き出す
一部始終見ていたティアは、微笑ましげに笑う


(…あ)


ふと、ティアがルークの裾を掴む
その、ティアの行動に、ルーク、ガイは共にティアへと視線を向けて

「どうかしたか? ティア」
「…ぁ…な、なんでもないわ」
「…そうか? じゃあ行ってくるよ」

問うと、ティアはハッと我に返ったように首を横に振り、手を放す
ルークは不思議そうに首を傾げるが、ティアがそう言うと、扉の向こうへと姿を消して

「…ティア、どうかしたのかい?」
「……今、一瞬…ルークが消えそうに見えたの」
「!」

ガイが問いかけると、ティアは考え込むような仕草。そして、ポツリと呟く
その呟いた言葉に、ガイは驚いて目を見張る

「…心配ないさ、ルークは帰ってきたじゃないか。今更消える、なんてしないさ」
「…そう、よね…」

ガイも、どことなく不安げな表情を浮かべてはいるが、それを振り払うかのように言う
ティアは、ルークが向かった扉を見つめたまま、同じように不安を振り払うよう、そう呟いた
のちに、その不安がただの杞憂ではなかったと知るとは、この時誰も思っていなかった



























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