アルビオールに乗り、ルーク達は一路、ルークの屋敷へ
アルビオールの中でも、ティアはルークから離れなかった
居なかった三年間を埋めようとするかのように
ルークは、傍らで抱きついて離れないティアを抱えつつ、ティアの耳元で囁く質問にずっと答えていた
そんな、はたから見ればどう見てもイチャついているようにしか見えない二人を、今更からかうような野暮なことを今のジェイド、アニスもしなかった

「…そろそろ、着きますよ。二人とも」
「あ、あぁ」

バチカルの、珍しい街並みが見えてくると、ジェイドが呟く
その呟きに、ティアを見つめていた目が眼下のバチカルへと向けられた
その表情は、故郷を懐かしむでもなく、はたまた慶ぶような表情でもない
ジェイドとガイは、少なからず不安を覚えた

「アルビオール、降下させます」

アルビオールの操縦士であるノエルが、そう言うのを合図に、アルビオールはバチカルの入り口付近に降下、停止した
バチカルに入ると、そこには変わらない景観
見上げる先には、自分の屋敷と城がある最上層

「私、先に城へ戻ってルークが帰って来たことをお父様に知らせて来ますわ」

ナタリアが嬉しそうにティアとルークを見て言う
ルークは「俺も一緒に行くって」と言うものの、ナタリアは「いいえ、構いませんわ」と制した

「俺も、一足先にファブレ公爵とペールやメイド達に知らせて来るよ」

ナタリアと戯れているルークの肩に、ガイが手をのせる
ルークが「だから俺も行くって」と言うのを、ガイも「いいからいいから」となだめて

「さて、私はルークが帰って来たことを陛下に知らせて来ます。―アルビオールはお借りしますよ」
「じゃあ私はフローリアンに知らせて来るね。大佐ぁ、ダアト寄ってくださぁい」
「仕方ないですねぇ」

ジェイドとアニスはいつもと相変わらず、意味深な笑みを残して楽しそうに停めたアルビオールの方へ歩いていく

「じゃ、ルーク、ゆっくり街の中散策しながら帰ってこいよ」
「また後程」

各々、言い残して去っていった
最後の、ゆっくり散策しろ、と言った真意が気になるところだが
ルークとティアは呆気に取られ、皆がいなくなってから状況を把握
二人とも真っ赤になりながら、互いから目を反らした
しかし、それではらちが明かず

「…とりあえず、上に行こうか。ティア」
「…えぇ…」

仕方なく、ナタリア・ガイが使った、最上層に直接行くリフトとは反対にあるリフトで中層部へ
散策、と言っても、旅をしていた頃にさんざん歩き回ったので、勝手は知っているのだが
中層部に上がると、見覚えのある三人組がいて
その三人組のうち一人、唯一女性であるノワールがこちらに気付く

「おや、ルーク坊やじゃないかい。亡くなったって噂されてたけど、ありゃデマだったようだねぇ」

その言葉にルークは苦笑して

「あの状況で生きてたのは本当に奇跡だと思ったけど、なんとか」
「まぁ、生きてたんだからせっかく長らえた命、大切にしな」
「あぁ。わかってるよ」

ノワールが見せた笑みに、ルークの苦笑も消える
柔らかくなったルークの笑みを見て、ノワールは満足そうに頷いて
その後、ルークの傍らで様子を見ていたティアへと目を向ける
その視線が、どことなくいつもより優しいのは気のせいだろうか
こんなことをノワール本人に言えば「私はいつでも優しいよ」と言ってきそうなものだが

「…よかったじゃないかい、旦那が戻ってきて」
「だ、旦那じゃないわ!」
「今更何を言うんだい。健気にずっと待ってたのに夫婦にならないわけじゃないだろう? 今から呼び方考えて置いた方がいいんじゃないかい?」

すごく楽しそうに、かつ嬉しそうにノワールは笑う
ティアとしてはもう逃げたしたい気持ちでいっぱいだが、彼女はそうはさせてくれないだろう
出来る限り顔が見えないようにうつ向き、赤くなった顔を隠して
ルークはルークでノワールの言った「夫婦」という単語に思考を巡らせている
ルークにとって、そうなるには問題が山積みだから
そんなルークとティアの考えを知ってか知らずかノワールは笑みをいっそう綻ばせた

「まぁ、とりあえずはあんたがやらなきゃならないことをするんだね」
「うん…ありがとう」
「いいんだよ。…あぁ、あのツンデレ坊や…アッシュにもよろしく言っといとくれ。あんたが生きてるなら、あの坊やも生きて帰って来てるんだろう?」
「あ、あぁ。…言っとくよ」

その時、ルークもティアも少し体がこわばったのを気付いたのだろうか
たとえ気付いていたとしても、勘の良い彼女のことだ
何かを感付いているかも知れないが、この時は何も言わずに去って行った

「…アッシュが亡くなったこと、気付いているのかしら」
「…気付かない方が良い、と思ってるけど、そうは行かないだろうな」

その言葉を言うルークは、複雑な表情を浮かべている
その表情の真意を、今、ティアには読みとく術はなかった
その表情の真意を知っていたところで、何も出来なかっただろうから
しかし、のちにこの表情の裏に秘めた思いを、願いを、知っていたら…と思うような出来事が起こるなどと、知る由もなかった






















END







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