「…ルーク、ルークなのですね…?」
「はい」

驚いた様子で、ゆっくりと歩みを進めた
ルークは、その場を動くことなく傍に寄ってくるその人を見つめていた
居ない間に、伸びてしまった身長のせいで、違和感を覚えていたから

「…生きて、いたのですね」

涙ぐみながらその人が聞くと、ルークはゆっくりと頷いた

「アッシュの、おかげです。アッシュが居なければ、今頃俺は…いや、俺達は消えていました」

自分の中に、アッシュを思い浮かべながら、言う

確信、と言えるほど強くはないが、この体はアッシュのものだと感じていた
消えかけていた自分と、持っていたアッシュの体
多分、アッシュの体に、自分が入り込んだのだろうと見当がついた







「…死してなお、アッシュはあなたを支えているのですね」

声がして、ルークはその方向を向く
さっき、ルークの叔父、国王にルークの生存を報告しにいったはずだった

「…ナタリア…報告、終わったのか?」

少し、間が空いた
すでに、両親に挨拶を済ませた後だったので、気が抜けていたせいだろう

「…えぇ。こちらにも顔を見せて欲しい、とのことですわ」

柔かな笑みを浮かべ、ナタリアは頷いた

「わかった。…さっきの話、聞いてたのか?」

返事の後、少し躊躇いがちに尋ねた

「ごめんなさい。立ち聞きするつもりはなかったのですが…」
「…いや、それは別に良いんだけどさ。お前は…」

伏せがちになる瞳
ルークの言葉の先を分かっているが故だった

「…あなたは、本当に優しくなりましたわね」
「…は?」
「…いえ、最初から優しかったのでしたわね」

ナタリアは、伏せ目がちに笑う
ルークは、恥ずかしさから顔を反らしていたが、ナタリアを見た

「…ナタリア…」

呟くようにルークは言った

「…ナタリア」

穏やかな気分だった
ゆっくりと、息をついて声を発する

「…なんです?」

いぶかしげに、ナタリアはルークを見た

「…俺はさ、アッシュは生きてるって信じてるんだ」

微笑んで見せる
優しくて、とても穏やかな笑みだった

「…なぜです?」

問いかえすナタリアの表情は、少し冷たかった
けれど、なぜか臆する気持ちはこれっぽっちもない
ゆっくり、自分の腕を持ち上げていく

「俺と、一緒に、さ」

開いたままの掌をギュッと握り締め、自分の胸元に当てた
それが、何を意味するかなどその人次第だが、ここは意味が通じたようで
軽く強張っていたナタリアの表情が和らいだ
分からない、とでも言いたげに、ナタリアは首を傾げて、ルークを見る

「アッシュは、ここに居るからさ」

付け足した言葉は真実
確かに、もう話すことなど出来はしないけれど、ここにいる、と
目には見えなくとも、彼はこの場所に居ると伝えたかった

「…アッシュが…?」

わからないのも当然だろう
自分はルークでも、アッシュでもない
実感にはほど遠い

「そう。ナタリア、君の中にも」
「…ぇ…?」

それは確信にも似た、真実
時に、忘れがちなその真実は、確かにあった

「…アッシュは、俺やナタリアの、ここに生きてる」

優しい口調が、ルークともアッシュとも取れなくて、思わず涙が流れた

「…ぉ、おい、ナタリア…」

うろたえる姿も、全て彼と被ってしまって余計に止まらない
確かに、生きていると感じられた瞬間だった

「…アッシュは…あなたを支えているだけでなく、あなたやわたくしの中で生きているのですね…」

これからも、彼は皆とともに生きていく
そう、確信した瞬間







END



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