「…街のようすに変わりはない…ってことは、そんなに時間経ってないよな」

エルドラントの落ちた場所に程近い街、ケセドニア
そこで、自分の記憶と照らし合わせながら街の中を散策していく
時間が経っていれば、それなりに外観は変わっていて当たり前
しかし、そんな思いとは裏腹に変わりない街の情景

「…そんなに時間経ってないんだな」

少し、安心したとでもいえばいいのか
肩の力が抜けたような気がした

「…もう、遅くなるし…宿に行こうか…」

安心したら、お腹が減った
緊張が解けたことで、体も疲れを訴えている
何せ、この街に着くまで歩き通しだったし、その間、魔物の相手までして歩いてきたのだ
しかも、一人で
疲れているのは仕方ない

「…明日は、アスターさんの所に行ったほうがいいかな…何回も世話になった人だし…」

宿へ向かう途中、そんなことを考えながら歩いた

「…こんにちは、アスターさん」

次の日、昨夜決めていたとおり、ケセドニアのアスターさんの屋敷へと向かった
大きく、階段を上がった先の扉から、奥へ進むこと数分
すぐにその人が居る部屋へと辿り着いた

「…これはこれは、ルークさんじゃないですか。ですが、あなたは…」

あまり、驚く様子もなく、尋ねてくる
さすがに、情報は行き渡っているらしく
俺は苦笑するしかない

「…死んだ事になってると思う。けど、帰ってきたんです。まだ、皆に会ってはいないですけど…」

軽く説明すると、何とか納得してくれたようで

「…そうですか。連絡、なさいましょうか?」
「…いや、直接会いに行きます。死んだ人間が、いきなり街の中に現れたら、大騒ぎになる」

気遣いはありがたいが、連絡するだけでは信じる事は出来ないだろう
それに、

「…帰る前に、寄りたい場所がありますから」

そう言うと、察してくれたようで
アスターさんは、笑うとなぜか手を叩いた

「…?」
「そんなに、汚れて破けた服では再開には似つかわしくない。出来合いですが、服を差し上げますよ」

呼び出されたメイドが持ってきたのは、簡素な服だった
けれど、今の破れた服よりはまだマシな方だろう

「…すいません」
「いえ。あなたには、大変お世話になりましたから。このくらいは、させてください」

部屋に、甲高い、けれど嫌ではない笑い声が響き渡った

「…ありがとうございます、アスターさん」

その服を受け取って、その場を後にした

「…軽くて、動きやすいな。この服」

早々に宿に戻った俺は、アスターさんに貰った服を着てみた
少し肌寒くなってきたこの季節には、ちょうど良いくらいに体を覆っていた
すっかり元の長さに戻っていた髪の色が、その服にはよく栄える

「…そろそろ、行くとするか」

服を見て、笑っている場合じゃない
今日しか、自分にはあそこに行く意味が無くなってしまうのだ
たいして量はないが、荷物を持って、宿を出た

「…目指すは、タタル渓谷、だな」








足早に、その場所へと急いだ








END



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