『ルークは、優しいんですね』
『ルークはもともと優しかった。ただそれを表現する術を知らなかっただけなんですよ』
『ルーク、今のは僕があなたに贈る預言…数あるあなたの未来の…一つの選択肢です』
イオンの、笑顔
イオンの、声
そのどれも、もう見ることも聴くことも出来ないけれど、忘れることは無いだろう
…――絶対に
「…イオン…」
ここに来ると、嫌おうにも思い出す
共に旅をしていた、仲間を
「…ルーク?」
「…ティア」
物思いに耽っていると、声が聞こえた
何かと思い、声の主を見る
パッと目に飛び込んできた、ブロンドの髪―ティアだった
その名を呼ぶと、微笑み、近付いてきて
「…何を考えてたの?」
どうやら、考えてた事は見通されているらしい
そう問うティアの顔は、どこか浮かない
「……イオンの事だよ」
言うと、やっぱり、と言いたげな顔になる
その表情に、ルークは苦笑するしかなかった
「…どうして、分かったんだ?」
ポツリと、尋ねるとティアは不思議そうにルークを見つめた
―理由なんて、分かり切っていると思っていたから
「…こんなとこで一人、物思いに耽ってたら大体想像がつくわよ。―この墓標の前なら、尚更、ね」
苦笑混じりに、ティアはそれを―イオンの墓標を見つめた
遺骨すらない、ただそこに建てられているだけの墓標
跡形もなく消滅したイオンのために、と建てられたものであり、そこには、遺品が多少埋められているだけだった
「…もう、一年になるんだな」
「…そうね」
そんなに時間が経っているなんて、意識すらしていなかった
しかし、確実に時は進んでいるものであって、戻ることは、ない
懐かしくも、哀しくも思えるものだった
「…ルーク、また変に深く事を考えすぎてたりしないわよね?」
「大丈夫だよ。卑屈になることは、もうないから。それもこれも、ティアやガイ達や…―イオンのおかげだ」
そう言うルークの表情は、決して明るいものではなかったが、ティアを安心させるには十分だった
胸を撫で下ろすティアをしり目に、ルークは黙祷する
その脳裏には、イオンがいるに違いない
「…イオン…俺達はおまえが導いてくれた未来を進んでいくから…―」
小さな声で、言う
そして、
「ありがとう」
一言、力強く言い残した
ティアには最後の一言しか聞こえてはいないだろうが、笑みを浮かべた
―たとえ、もう逢うことすら出来なくても、見守っていて欲しいと、切に願うから
END