夢は、人の心の鏡。
欲、願望と言った人の心に在る感情を映す。
云わば、映し鏡だと。

人は、言う。




夢に、魔が棲んでいるのを知っているだろうか。
夢魔、と呼称される夢の中にのみいる存在。
それは人に夢を見せる存在であり、故に誰も見る事の叶わない存在。


夢魔の中には、夢を喰らうもの―夢喰―がいる。
そいつが夢を無差別に喰い、忘れさせているのだ。




その夢魔が今、変わり始めていた――――――――――



























...DREAM 1st...
『夢』























「此処は…?」

真っ白な、空虚な世界。
そこはまるで、世界の果てか、はたまた時空の狭間とでも言うところか。
一人の少年が、佇む其処は、果てしなく広く、白いばかりだ。

「何で、俺こんな所に一人で…」

周りを見渡しつつ、一歩一歩確かめるように歩を進める。
真っ白な世界では、何処かで足元が途切れていても可笑しくはない。
何より、何もないのでは、進もうにも方向も分からない。

「―何も、ないだけなのに、どうして不安になるんだ―…?」

胸の前で拳を握り締め、震える自分を奮い立たせるかのように。
けれど、和らぐ筈のないその不安は募るばかり。
ズキリと痛む。
そうして、胸を締め付けるのだ。

「―…まるで…、あの日と同じだな…―」




『あの日』―自分が"孤独"を知る日と同じ。




助ける事も出来ず、亡くした両親の、声を聞いた瞬間。
自分の不甲斐無さや、至らなさに、嫌悪したその日。
見たくもないと閉ざしていた筈の過去。

「…なんで、こんな夢…」

あの日以来見なかった夢。
なのに、今更見るとは思っていなかった。

「…夢魔が、俺に見せてるのか」

思い当たるのは、それだけ。
けれど、夢魔が見せる夢に、色がないのはおかしいと思う。
何故か、胸騒ぎがした。

「…起きられるか…?」

とにかく、現実の世界に戻る事が先決だ。
出口などはないが、何処かに夢魔か自分の中に居るティルが居る筈だった。
夢魔は夢世界の住人。ティルは夢魔より造られし者。
そのどちらかに接触すれば、出られる筈だ。
しかし、ティルはともかく、夢魔に接触するのは難しい。
夢魔はその夢世界に同化している事もある。

見つけ出すのは至難の業で。



「…クレイー。居るだろー?」



真っ白な世界の中、ひたすら歩くのみ。
どこまで続いているのかなど、聞くだけ莫迦な話だった。

「…呼んだ?」

どこからともなく一人の女性が現れ、いきなりの事に少々驚く。
しかし、その驚きも束の間。
柴は、顔を顰めた。

「…どこに隠れてたんだよ」
「隠れてたんじゃないの。ただ、夢が変だったから偵察」

クレイ、と呼んでいた女性は、そう言ってその真っ白い世界を見上げた。

「…この世界が、変?」
「うん。何か、嫌な予感がする」

そう言ったクレイの顔は、真剣そのもので。
この世界が、早々壊れはしないと思っているが、一大事なのだろう。
同じように、その真っ白い世界を見上げる。
ただただ白と言う色が、その姿を大きく見せていて。

「…夢魔が、何かしようとしてるのか?」

しかし、クレイは首を横に振った。

「…ランク"ナイト"以上は自我を持っているもの。無闇にそんな事はしない。それに"ポーン"も"ルーク"も、バカだけど…夢を喰らうこと以外しないと思う」
「…そうか…」

柴も、考え込むように手を顎にあてた。
夢の世界は、今は何も変わりそうにないくらい、真っ白いだけ。
考える事すら、無駄に思えた。

「…とりあえず起きよう、クレイ。その事は"リク"と"(コア)"にでも聞けばいい」
「うん…分かった」




考えるも虚しく、二人は夢を後にした。







SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送